2016年7月27日コンプライアンス
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精神疾患は労災認定されるの?曖昧な基準を徹底解説

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「仕事中に怪我をしました。労災は適用されますか?」と言われても判断に困ってしまう…。そのような経験がある担当者の方もいらっしゃるかと思います。

仕事中の怪我や病気、精神疾患でも、どこからどこまでが認定されるのか本当に把握できているか?と言われても自信を持って答えられない。今回はそんな複雑な労災についての理解を深めるべく、基本的なことから曖昧とされているところまで、解説していきたいと思います。

おさらいしておくべき、労災の基礎

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労災とは、簡単に言うと、業務時や通勤時に起こった災害のことで、怪我や病気などが含まれます。例えば、営業の人が外回りしている時に事故に遭うと、労働中の怪我なので労働災害となります。

この労働災害が起こった際の保険が、労災保険(労働者災害補償保険法)と言い、被災労働者や遺族を守るために必要な保険給付がなされます。業務上の災害については、労働基準法に使用者(雇っている企業など)が療養の保障をしなければならないと定められています。また、この保険は労働者ではなく、事業所ごとに加入します。そのため、事業所が加入していれば、労働者全員に保険給付がなされます。なお、パートやアルバイトの方にも適用されることも忘れてはいけません。

では、実際に労働災害が起きてしまった時にはどうすれば良いのでしょうか?

その際は、労働基準監督署への災害発生報告や、保険給付を受けるための手続きが必要となります。具体的には、労働基準監督署にある請求書を提出し、必要な調査を行い、認定されれば保険給付が受けられるという仕組みになっています。

それでは、どのような場合に認定されるのか、もう少し詳しく見てみましょう。

業務していない時でも、労災認定はおりる。その条件とは?

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労災保険は、業務上で起きた災害に対して保険給付を与えるとしています。しかし、業務上については明記されていません。この点については厚生労働省が業務上の条件として大きく二つに分けて明記しています。以下がその条件です。

【業務遂行性→業務起因性→業務災害】
1:業務遂行性…仕事中に起こった災害であるか
2:業務起因性…仕事が怪我や病気の原因となっているか

この二つが認められることによって労災保険の補償を受けることができます。よって起因性の要件として、遂行性があるということになります。さらに、業務遂行性については、使用者の支配下にあることとも言われます。

・使用者の支配・管理下であるが、業務をしていない場合
・使用者の支配下ではあるが、管理下を離れて業務をしている場合

休憩しており、業務をしていなくとも、遂行性があると判断されることがあるので、労災保険を請求する時には注意が必要です。

加えて、通勤災害についても詳しく見ておきましょう。単に仕事場に通っている時だけが通勤でないことが厚生労働省によって定められています。条件としては以下の項目があります。

・住居と就業の場所との間の往復 就業場所から就業場所の移動
・単身赴住居と帰省住居の移動を合理的な経路及び方法で行い、業務の性質を有するものを除く
・移動の経路を逸脱、中断した場合はその後の移動は通勤とならないことがある

厚生労働省は就業に関して、住居とはなど、条件ごとに細かく定めています。ここにすべて書くことはできないので、参考にしたい方は業務災害・通勤災害についてを参考にしてください。

以上、詳しく見てきましたが、一番判断が難しいところが起因性の有無でしょう。自宅で何らかの病気で倒れてしまった…。これは仕事が原因なのか?精神疾患はどこまで認定されるのか、判断が難しいからこそ、確認が必須です。

3つの基準に照らすだけで、労災認定を簡単に判断する

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2011年、新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準」が定められました。これに基づき労災認定がなされています。では、精神障害が発病した時、労災なのかどう判断すればいいのか、新たに定められた基準に即して紐解いていきましょう。

まず、発病した要因を調べます。その時に基準となるのが3つの側面。

① 業務による心理的負荷→仕事の失敗、仕事の量・質など
② 業務以外の心理的負荷→家族・親戚の出来事、金銭問題など
③ 個体側要因→アルコール依存度、既往歴など

この3つの面を意識しながら、精神障害の発病の要件に当てはまるのかを見ていきます。労災認定の要件は以下に記します。
・認定基準の対象となる精神障害を発病していること
・認定基準の対象となる精神障害の発病前、おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
・業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

上記の中で最も難しいのが、「業務による強い心理的負担が認められるかどうか」です。ここに先ほどの3つの側面を照らしながら総合的に考慮し、業務による精神障害の発病なのかを判断します。

ここで、精神障害の労災認定の中でも、最も労災認定されやすいものをご紹介します。ここで使うのは、3つの基準のみ

1つ目の基準として、特別な出来事に該当する出来事がある場合とされています。
特別な出来事とは
・心理的負荷が極度のもの…生死に関わる業務上の怪我や病気をした時など
・極度の労働時間…発病直前の1ヶ月におおむね160時間を超えるような時間外労働

2つ目の基準として、業務以外の心理的負荷が強いこと。離婚した、子供が亡くなった、天災や火災など巻き込まれたなどの出来事が認められないこと。業務以外で大きな出来事が起きていると、仕事が原因と明確に示すことができず、労災認定にはなりません。

3つ目の基準として、個体側要因がないこと。精神障害の既往歴やアルコールの依存度、これが発病の原因なのかを慎重に判断します。これがなく、発病していたら、仕事が原因として発病されたと判断されます。

この他にも労災認定されることがありますが、細かく要件が分かれているので、詳しく知りたい方は精神障害の労災認定を参照ください。

労災認定は思っているよりも複雑かつ、細かに条件が決まっている

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労災認定は複雑で、曖昧なものというイメージがあるかと思います。しかし、公式のページを見てみると、とても細かに場面ごとで分けられ、労災として認定するのかどうかの基準となっています。

とはいえ、分けられている場面に入らないことも、もちろんあります。そうなってしまうと、そのケースごとに労災が認定されるのかしっかりと検証しなければなりません。
ですから、労災は簡単には認定することができないため時間をかけて検証します。だからこそ、あらかじめ労災についての知識を蓄えておくことが大切でしょう。

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