ジョブローテーションとは?メリットやデメリットも解説
昨今、「配属ガチャ」という言葉が採用市場で流行っています。この言葉は、新卒で入った従業員がどこに配属されるかわからず、企業の意向で決まるという状況をソーシャルゲームでランダムにアイテムをゲットできるシステムになぞらえたものです。
なぜ配属ガチャが起こる理由として「ジョブローテーション制度」があります。企業にとって、従業員を様々な職場・職種に配置するメリットはあるのでしょうか。
今回はジョブローテーション制度の概要やメリット・デメリットについて解説します。
ジョブローテーション制度とは?
ジョブローテーション制度とは、従業員の能力開発を目的として、定期的に職場や職務を変更する制度です。
企業には営業、経理、マーケティングなど様々な部署があります。企業は新たに入社した従業員がどの業務が適正なのか、不適正なのか、わからないことが多いため、短ければ数ヶ月、長ければ数年単位で仕事(ジョブ)を交換(ローテーション)して経験を積んでもらいます。
即戦力のスペシャリストを求める中途採用に対して、主に新卒など、いわゆるゼネラリストとして、企業の将来を担う若手従業員に向けた制度といえるでしょう。
人事異動制度との違い
ジョブローテーション制度と人事異動との違いはその目的にあります。人事異動は欠員の補充や部署の強化などが主な目的です。対してジョブローテーションは「人材育成」が主な目的になります。
社内公募制度との違い
ジョブローテーション制度と社内公募制度との違いは、選定プロセスに違いがあります。社内公募は特定の部署が求めている職種や役職を公開し、従業員が応募するという制度です。したがって、従業員の意向によって職場や職務を変更することになります。したがって、変更をしない、という手段も考えられるのです。対してジョブローテーション制度は、職場・職務の変更を前提としています。もちろん、ジョブローテーションは従業員個人や周囲の意見を取り入れることが重要です。
ジョブローテーション制度のメリット
それでは、ジョブローテーション制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
1.従業員の業務視野が広がる
従業員にとっても、たとえば営業が得意なのか、それともバックオフィス業務が得意なのか、経験してみることでしかわからないこともあるでしょう。ジョブローテーション制度は適材適所な人材配置をするための手法のひとつなのです。
2.従業員のモチベーション低下を防ぐ
新たな職場・職務に配属された従業員は、当初はモチベーションを高く維持したまま業務を行えるでしょう。しかし、業務に慣れ、マンネリ化してくるとモチベーションが低下する可能性があります。従業員の定期的に業務領域を変更することで従業員のモチベーションをリセットできる点もジョブローテーション制度のメリットと言えるでしょう。
3.従業員間の交流が盛んになる
ジョブローテーション制度には企業内の相互理解を深めるという目的もあります。企業においては部署・職務間の連携なくして事業をすることができません。
例えば製造業であれば調達、設計、生産、物流、販促など多くの部署が存在します。他部署・職務と円滑に業務を行うためには理解を深める必要があります。
ジョブローテーション制度は定められた期間ながらも、多くの経験を従業員に経験してもらい、他部署・職種との相互理解を深められます。
また、顔見知りの従業員が増えることで、業務の依頼や承諾に対する精神的な安心感もあります。企業内の交流が増えることで自部署内では考えもつかなかったイノベーションにつながる可能性もあるのです。
ジョブローテーション制度のデメリット
ジョブローテーション制度にはデメリットも存在します。
1.専門性のある従業員が育ちづらい
仕事の専門性は簡単に身につくものではありません。数年~数十年と業務を経験する必要があります。しかし、ジョブローテーション制度ではようやく業務に慣れてきた段階で仕事を変更するため、習熟度が中途半端になってしまう恐れがあるのです。その結果、生産性の低下につながります。したがって、あるタイミングで従業員にとって適材適所な職場・職種を把握する必要があるでしょう。また、社内公募制度も設置することで従業員の意向を反映した人材配置も可能になります。
2.離職率の増加に繋がりやすい
1のデメリットと関係しますが、何度も仕事が変わると、「手に職がつかない」「将来に不安がある」といった悩みを抱える従業員も現れます。このような従業員のケアを怠ると退職につながる恐れがあるのです。したがって、従業員個人のキャリア形成も考慮したジョブローテーション制度を設計しましょう。
ジョブローテーション制度の今後
アメリカやヨーロッパ諸国などは、昔から採用の段階から職種別の採用が主流です。それでは、なぜ日本における多くの企業ではジョブリターン制度が採用されているのでしょうか。その理由のひとつが「終身雇用制度」にあります。これまでは、新卒で入ったひとつの企業で社会人生活を終える人が多数いました。したがって、その企業について深く広く知っているゼネラリストを育成する必要があったのです。
しかしながら、近年では少子高齢化や働き方改革など、様々な要因が重なり、人材の流動化が激しくなっています。中には入社する前から転職を前提としているといったことも少なくありません。そのため、日本においても職種別採用に舵を切っている企業も増えてきました。
今後の日本におけるビジネスの潮流は誰も想像もつきませんが、「終始雇用制度」が崩壊している中、ジョブローテーション制度は意味をなさなくなる可能性もあります。人材育成に限らず、ビジネスシーンにおいては常に社会の動向を捉える必要があるといえるでしょう。