企業戦略と空間が融合するand factoryの「お客様を呼びたくなる」オフィスづくりとは?

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天井高5メートルの開放的なワークスペース、部屋ごとにコンセプトと設えが異なる会議室、気分をリフレッシュさせられるカフェ、そして先端のIoTを活用した仕組み。

細部にわたるこだわりのオフィスで、社内外から高い評価を受けているのが、and factory株式会社(以下、and factory)です。同社は2014年9月に創業し、16年10月に現在のビル1Fに移転。18年2月にはメンバーの増加に伴い2Fを増床し、IoT空間が体験できるスマートショールームとリラックススペースとしてカフェスペースを開設しました。

オフィスのあり方が問い直されている昨今において、なぜこうした設計になったのか、オフィスづくりにかけた思いとは何か。執行役員の梅谷雄紀さんにお話を伺いました。

and factory株式会社ってどんな会社?

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▲天井高5メートルのワークスペース

「日常に&を届ける」ことをミッションに、日々の暮らしをより豊かにするためのサービス提供を目指すand factoryは、アプリ開発事業とIoT事業を主軸にビジネスを展開しています。

その内容は非常に多岐にわたり、出版社などとの協業よるマンガアプリや、ソーシャルゲームの攻略掲示板アプリの開発・運用をはじめ、IoT空間を体験できる宿泊施設「&AND HOSTEL®」まで開業。創業からわずか4年という短期間でこうしたアイデアを次々に形にするとともに、2018年9月時点で社員数は69名にまで増加しました。

事業の拡張とオフィスづくりには、どんなシナジー効果があったのか。移転の経緯からひもときます。

理想的なオフィスをイメージさせた「空間の可能性」

自由でオープンな環境のなか、個人が裁量をもって仕事に取り組めること。私たちand factoryは、そうしたオフィス設計が一人ひとりのアウトプットを最大化させると考えています」

もともと企業の根幹にそういった発想があるため、働く環境に対する意識は強い会社だったと梅谷さんは言います。そのため創業当時も、最新の情報が行き交う原宿にオフィスを構えていました。しかし会社の成長に合わせて、より多様な価値観をもつ人材の確保や、コーポレート・ガバナンスを考慮し、規模的な自由度がある場所への移転を考えたそうです。

「弊社の長所には、組織的なヒエラルキーが極端に少なく、横のつながりが強いことが挙げられます。けれど原宿時代のオフィスは、社員数35名にもかかわらず、扉を挟んで2箇所に分かれてしまっていました。わずか数メートルの距離でしたが、弊社らしさを担保するには、ワンフロアで隔たりがない状態がベターだと感じていました」

会社の考え方や物理的な課題を加味した結果、移転先の条件は「1階、ワンフロア、高い天井」というものに。いくつかの候補から最終的な選定にいたった決め手は、やはり5メートルという天井高でした。「この空間には、他にない可能性を感じました」と梅谷さんは振り返ります。

個人・チーム・事業のポテンシャルを最大化していく設計

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▲世界の都市名がつけられた会議室。都市のイメージに合わせて、各部屋のインテリアや壁紙、香りまで異なる。写真は会議室<ニューヨーク>

実際のオフィスづくりにあたっては、「コミュニケーションが活性化される状態をいかにつくりあげるか」を、一番のねらいに据えたと梅谷さんは解説します。

「経営層を含め、人との距離が近い状態、意思疎通がしやすい環境、隔たりがない空間をいかにつくるかを意識しました。そのため、全体のデザインからデスクの幅にいたるまで、余白のある設計になっています。場にも心にも、ゆとりがあったほうがコミュニケーションは取りやすいですし、より良い発想にもつながると思うからです」

その上で、世界各国の都市名を冠したこだわりの会議室、仕事の内容によって選べる集中ルームやフリースペースなどを設けて、コミュニケーションとアウトプットの最大化を後押しする工夫がなされています。また、IoTの活用も見逃せない特徴です。

主軸のひとつであるIoT事業をさらに発展させていくためにも、いかにオフィス内にIoTデバイスを取り入れるかは、非常に重要なポイントでした。一例を挙げると、集中ルームには人感センサーが設置されていて、誰かが使用していれば部屋の外にあるランプが点灯する仕組みになっています。空室状態が一目でわかるため、業務を妨げることがありません」

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▲集中ルームの外の壁。ブースを使用中の場合はランプが点灯する

そうしたテクノロジーを実験的にオフィスに取り入れ、運用することで知見を集積し、より精度の高いサービス提供に活かしているそうです。

場と制度の組み合わせが、自然な交流のきっかけを生む

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▲スマートショールーム。国内外から集められたIoTデバイスを常時展示している

2階の増床のタイミングには、IoTの魅力をさらに広げていくための「スマートショールーム」を開設。&AND HOSTEL®の部屋の一部を再現し、近未来のIoT空間を体験できるようになっています。同時に、研究開発拠点としても機能させることで、新しいアイデアの創出を目指しています。

2Fには人が集えるカフェスペース「&AND CAFE」も併設。1階にもフリースペースやリラックスルームはありますが、梅谷さんは全員が集まり社員同士がコミュニケーションを目的とした場所をつくりたかったと語ります。

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▲&AND CAFE。社内向けのイベント・勉強会なども行われる

「&AND CAFEでは、無料でお弁当が食べられる福利厚生『ランチサポート』を毎日実施していますし、毎週金曜日には出張バリスタを呼んで、おいしいコーヒーを飲めるようにしています。昼食の時間やコーヒータイムに人が集まる仕組みを意図的に組み合わせることで、自然に交流が生まれるきっかけをつくっています

増床にあたっては社員の方の要望も取り入れ、たとえば窓際にスタンディングデスクとハイチェアを設置。こういった配慮も、社員の生産性を高めるとともに帰属意識を高める効果を生んでいます。

対外ブランディングと社員モチベーションの両立を実現

and factoryではオフィス管理のために、3カ月に1度、経営陣も含めた全員で掃除をする時間を設けています。

「弊社はさまざまな企業様のコンテンツや、外部の方々の知恵を融合させて事業を行っています。そのため、特にオープンイノベーションや、オープンコミュニケーションといった考え方を重視。常に人と情報が集まりやすい環境を保つことに注力しています。そういう観点からも、清掃には大きな意義があります。いい空間には、いいコミュニケーションが生まれるはずですから」

来訪した方々からは「すてきなオフィスですね」といった感想が多いだけではなく、近年ではテレビCMやドラマの撮影などにもよく利用されているそう。また社員からは、「お客様をお呼びしたくなる」といった意見も多く、ここで働く誇りにもなっているようです。

「本来であれば、こだわった装飾や空間づくりは必要ないかもしれません。けれどオフィスは、週の内の5日間、長い時間を過ごす場所です。心地よい環境であるほうが精神的にも気持ちがいいと思いますし、仕事の効率も向上すると思います」

細部にまで手を加えた同社のオフィスづくりは、事業も空間も人も含めて、おもしろいことをしているという対外的なブランディングにつながるとともに、社員のモチベーションアップにもなっているのです。

計画的なオフィス設計が、企業のアイデンティティに

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▲執行役員の梅谷さん。会議室<ロンドン>にて

最後に、今後のオフィスの展開についてお伺いしました。

「引き続き、IoTの活用を促進するアイデアに取り組んでいきます。たとえば、人感センサーなどを使った出退勤の労務管理システムや、フリースペースにカメラを設置することで人の交流の状態を通知する仕組みなどが一例です。会社が継続的に、再現性のあるかたちで成長していくためのオフィスを目指していくと、必然的に企業のカラーも強くなっていくのではないでしょうか」

事業との親和性が高い取り組みやアイデアをオフィスに取り入れることは、企業の発展に大きなメリットをもたらします。and factoryの事例を参考に、オフィスの戦略的な展開を考えてみてはいかがでしょうか。