コンプラ違反で倒産200件! 改めて考えるコンプライアンス研修の重要性と目的
2017年度の帝国データバンク調査では、コンプライアンス違反が原因の倒産が231件にのぼっており、6年連続で200件台の倒産が報告されています。いまや世界中で「コンプライアンス遵守は企業として当然」のこと。しかし、自社のコンプライアンスがどんなものか知らない・覚えていないという社員は少なからず存在します。常にコンプライアンスを意識して働いている人は、そうそう多くありません。
ですから、まず、何も知らない新入社員へコンプライアンス指導を行うのが当然です。さらに、勤務歴の長い社員に対しても定期的に研修を行う企業が増えています。
本稿では、企業のコンプライアンスの重要性とコンプライアンス研修の効果を高めるポイントについて解説していきます。
コンプライアンスとは何か?
企業のコンプライアンスという言葉を聞くことはありますが、正確な意味や内容をわかっている人は少ないかもしれません。まずは、コンプライアンスの意味についてみていきましょう。
コンプライアンスの定義と遵守すべきルールとは
コンプライアンスは英語の「Compliance」から来ている言葉です。直訳すると「遵守」「準拠」「従順」となり、日本語では「法令遵守」と訳されます。そのため、企業のコンプライアンスという言葉は、企業が法令に違反することなく、社会規範を守り、公正かつ公平な立場であることと解釈されています。 ここでいわれている「法令」とは法律だけでなく、「社内規範」や「倫理規範」、「社会的な倫理」といった一般的な道徳観すべてを含んだ意味です。
「コンプライアンスを遵守しない・できない」のであれば、企業が規律を守ることなく、法的な違反行為やグレーゾーンの事業を行う事態になりかねません。社会全般の秩序を崩さないためにも、企業のコンプライアンスは法令のほかに常識やモラルも守らなければならないのです。
コンプライアンスが重要視されている背景
近年になってコンプライアンス指導に企業が力を入れるようになったのには、次のような背景があります。
①コンプライアンス違反による企業不祥事の多発
コンプライアンス違反は社員一人の、ほんの些細な行為から拡大していってしまうことがあります。日常でありがちな社員のコンプライアンス違反は、次のようなものです。
・備品の私物化
・上司の許可や指示がないのに残業する
・業務で知りえた社員や顧客情報を勝手に利用したり、外部に渡したりする
・会社のPCから外部のSNSや掲示板・業務とは無関係なHPへのアクセスする
・セクハラやパワハラ・モラハラなどのハラスメント行為
これらはすべて違反行為。社員にこのような行動をさせないために、企業全体・社員一丸となってコンプライアンス学習に取り組まなければなりません。
②企業の社会的責任が重要視される現代
社会的責任とはCSR( corporate social responsibility)と呼ばれ、eco対策や省エネ対策といった「地球環境への配慮」や、「ボランティア活動支援などの社会貢献」「地域社会参加などの地域貢献」のことを指します。ほかに「安全や健康に配慮した職場環境と従業員支援」や「適切な企業統治と情報開示」「誠実な消費者対応」「誠実な取引先との関係」も含まれ、「関連法規の遵守やコンプライアンス」もCSRの一環とみなされています。
企業が社会的責任をまっとうすると、他社をはじめ消費者や株主へよいイメージを与え、企業への好感度や評判が上がります。その結果、売上や株価の上昇など企業はさまざまなメリットを得ることができ、IRや広報戦略を考える上でも、コンプライアンス遵守は重要視されるべきなのです。
コンプライアンス研修の効果を上げるにはどうすればいい?
自社内でコンプライアンス違反が起きないようにするためには、社員への指導を徹底しなければなりません。とはいえ、型にはまった対応を行うだけでは高い効果は出せません。そこで重要なのが、コンプライアンス研修です。充実した研修を行うためには、以下のポイントに注意しましょう。
①従業員が参加しやすい研修を計画する
企業の研修と言うと「強制参加」というネガティブな意識が働いてしまうことも多く、「会社から押しつけられている」と感じる社員もいます。そのため堅苦しい座学よりは、ワークショップ型のイベント形式にするなど、社員全員が気軽に参加できるようにしましょう。そうした研修にすることで、コンプライアンスに対する意識を変えやすくなるでしょう。
②コンプライアンス問題のリスク発生後に実施する
コンプライアンス研修は、法令や観念的な説明ばかりが続いてしまいがちです。そのようなスタイルでは話に現実味がなく、自分とは無関係・他人事と捉えられることも。内容を聞き流してしまう社員もいるでしょう。
研修では、コンプライアンス違反は自分の身にも起きる可能性があるということを真剣に受け取ってもらわなければなりません。そのためには、社内や関連会社、同業内で実際に生じたコンプライアンス違反の事例紹介が有効です。そして、社員同士でケーススタディをディスカッションさせ自分事に思えるような工夫をすると、研修の効果を高められます。
③昇進・昇格時の研修に組み込む
一般的に昇進や昇給の時期は、今までよりもハイレベルな仕事や判断が求められるようになるため、意識が高まりやすいときです。そのため、このタイミングで社内外の研修に参加させることをおすすめします。とくに外部の研修は、一般社員に向けたものから、課長クラス向きや部長クラス向きなど、それぞれの役職に応じたコンプライアンスのテーマでの受講が可能な研修もあります。自分の立ち位置に適したコンプライアンス研修を受けさせることで、一人ひとりの意識を高められます。
④当事者意識を持ってもらう
コンプライアンスが関係しているのは、企業の損益だけと思っている社員は多いです。しかしながら、実際にコンプライアンス違反を行ってしまった社員は逮捕されてしまうこともあり、逮捕に至らなくても刑事や民事での責任を問われて裁判に発展し、高額な損害賠償を請求されてしまうこともありえます。賠償金の支払いで借金ができてしまい、家庭が崩壊してしまう可能性もなくはありません。
また、テレビや新聞などで取り上げられてしまうと、世間に実名がさらされます。つまり、自社のコンプライアンスを守ることは、会社の利益を守るだけでなく、自分自身や大切な家族の生活を守るためにも必要なことだと、しっかりと伝える必要があるのです。
継続的な研修でコンプライアンス違反対策を
コンプライアンスを遵守するのは社会人として当たり前であり、企業としてとても重要なことです。社員一人ひとりに当事者意識を持たせ、コンプライアンス違反を減らしていくためには、研修の工夫が有効。社員が参加しやすいかたちで行ったり、社員の意識が向上するタイミングをうまく利用したりするようにしましょう。
基本的には社内で定期的に指導を行ったり、外部研修を取り入れたりして、違反が発生しないよう常に多様な対策をしていく必要があります。