社内報の作り方を事例から学ぼう!2016年度「経団連推薦社内報」表彰式に行ってきた
「社内報をもっと会社のためになるものに変えてほしい」
社内報の制作担当者は、会社からしばしばこのような要請を受けることがあります。とはいえ、社内のみで共有される社内報はなかなか資料が出回っておらず、他の企業を参考にすることは至難。
社内報をこれからどのように良くしていくか、頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな社内報制作担当の皆さんに向けて、「2016年度『経団連推薦社内報』」で表彰を受けた社内報の成功事例を紹介します。2017年3月15日に行われた表彰式の様子と共に、優れた社内報を作る企業はどのような事を心がけているのか、見ていきましょう。
「経団連推薦社内報」とは?
「経団連推薦社内報」は、企業が作る優秀な社内報を表彰するもので、1966年に創設された歴史ある制度です。
51回目となる2016年度は、「雑誌・新聞」「イントラネット(Web)」「映像」の3部門に、経団連が政策提言として推進する“女性活躍推進”と“働き方改革”を「特定テーマ」として加え、4つの部門で作品を応募しました。
全部門合わせて、集まった応募は265作品。その中から審査員が厳選なる検討を重ね、受賞作品が決定しました。
応募作品の傾向と課題を指摘。審査員のコメント紹介
最初に、全体を通した審査員のコメントをご覧いただきましょう。今回は、雑誌・新聞部門の審査を担当した柴田通彦氏と、イントラネット(Web)部門の審査を担当した佐藤好彦氏のコメントを抜粋して紹介します。
1.雑誌・新聞部門:柴田通彦氏「紙媒体の特性を活かして、読ませる工夫ができている」
1人目は、雑誌・新聞部門の審査を担当した柴田通彦氏。
応募された作品を見て紙媒体の底力を感じたと、柴田氏は語ります。
「毎日更新することになるWebと比較し、紙媒体は月刊か季刊と、企画内容や仕掛けなどについて考えられる時間があります。今回の応募作品を見ると、時間をかけて作れるという特性を存分に活かして、社員に読ませるためのさまざまな工夫がされていると感じました。」
特に際立っていたのは、最優秀賞を受賞した大日本印刷株式会社『DNP Family』なのだそう。第50号にちなんで、50人の活躍している社員を選んで特集していました。
「冊子を開くと、まず目に飛び込んでくるのが、社員たちの生き生きした顔やダイナミックに活躍する姿。写真やレイアウトの工夫によって情報を効果的に伝えることができるのは、やはり紙媒体ならではの良さではないかと感じさせてくれました。」
Web媒体と比較したときの紙媒体の特性は、写真やレイアウトを工夫できること。社内誌を作る場合は、情報を伝えるときにどのような見せ方をするのか、よく検討してみてはいかがでしょうか。
2.イントラネット(Web)部門:佐藤好彦氏「スマートフォン対応が今後の課題」
続いては、イントラネット(Web)部門の審査を担当した佐藤好彦氏。
イントラネット(Web)は、一部のページを切り取って審査することになる作品が多かったので、審査がとても難しかったのだそう。優れた作品が並ぶ中、今後の応募方法を含めた審査の課題を見つけたと佐藤氏は語ります。
「素晴らしい作品が並んでいる一方で、一般的なWebサイトを作る上で課題になっている「スマートフォンへの対応」については、イントラネット部門の応募作品を見る限りまだあまり考えられていないなと感じました。」
今のところ、社内のイントラネットはパソコンで見ることが一般的ですが、今後はスマートフォンでイントラネットを見るようになる時代がすぐそばに迫っているのだそう。
「スマートフォンへの対応は、企業のセキュリティをはじめとしたいろいろな問題に関わることなので、一概に良いとは言い切れません。しかし今後数年で、一般的なサイト同様にイントラネットもスマートフォンに対応させるような変化が訪れると思います。どこの企業がそこに着手していくか、これから注目して観ていきたいです。」
イントラネットの社内報を考えるときは、コンテンツの内容だけでなく「スマートフォンへの対応」という体制面も強化していく必要が出てくることを教えてくれました。
カギは“コンセプト設計”。最優秀賞『DNP Family』はこうして作られた
雑誌・新聞部門で見事に最優秀賞に輝いた、大日本印刷株式会社『DNP Family』が、どのようにして生まれたのか見ていきましょう。
同社は、次のようなステップを踏んで社内報の制作に取り掛かかったといいます。皆さんの企業でも実践できる方法なので、ぜひ参考にしてみてください。
1.会社が抱える課題の認識
社内報を作る際にまずやるべきことは、「会社がどのような課題を抱えているのか認識する」こと。
社内報は、ただ社内の情報を社員に共有するためにあるものではありません。社内報を通じて、会社の課題を解決するところに目標を置いてこそ、真の価値が発揮されるのです。同社は、
『社員が、部門を越えた業務の内容や人のことをよく知らない』
という点を課題に設定しました。
2.狙いの策定
続いて、最初に挙げた課題を解決するために、社内報を読むことで社員にどうなってほしいか、「狙いの策定」をします。
社内報で目指すゴールをはっきりとさせることによって、次に策定する「編集方針」をより具体的に定められるようになるので、このステップは特に大切にしましょう。同社は、「他の部門に対する関心が希薄なのではないか」という課題を受けて、
『読んで社員に共感してもらい、「自分ごと」に置き換えて動いてもらう』
ことを狙いとして設定しました。
3.編集方針の策定
社内報を読んだ社員がどうなってほしいかというイメージが固まったら、いよいよ実際の編集レベルの方針を立てていきます。
この「編集方針の策定」は、社内報の狙いをより具体化するものです。同社は、社員に共感・行動をしてもらうためにはどうすればいいのかを考えた結果、
・「事象」よりも「人」にフォーカスする
・生活者視点を刺激する
・人を繋ぐきっかけを提供する
・「他人ごと」を「自分ごと」へ意識転換させる
・具体的事例を紹介する
という編集方針を立てました。
加えて、「こうしなさい」「こう動きなさい」と強制的な言い方をするのではなく、「こうしてみたらいいんじゃない?」と提案するような、社員を“くすぐってみる”感覚で編集することを意識したそうです。
ここまで見てきたように、同社は社内報を作るにあたって「コンセプト設計」を非常に綿密に行っていることが分かります。作るものばかりに目を向けられてしまいがちですが、作る前段階で、しっかりと計画を立てることが大切なのではないでしょうか。
4.制作
これらのコンセプトのもとに作られたのが、グループ報『DNP Family』です。
2015年秋に会社のビジョンが大きく変わったタイミングで、大日本印刷1社の社内報からグループ報に変わってから50号という節目を迎えたこともあり、50人の社員の思いを一人ひとり取り上げながらビジョンを伝えるように工夫したのだそう。
社員を“くすぐってみる”編集を意識したため、ビジュアルを工夫した刺激的なデザインに。
「動き出す」というキーワードを視覚的にイメージしやすいように、社員のポーズなどにもこだわっています。
年4回発行の各号で数々の工夫を凝らすことで、『DNP Family』は好評を得ています。
「うちでこんな仕事をやってるんだ」「他の部署の人も頑張っているんだな」などと、若い社員から経営層に近い社員まで、自分の部署以外にも関心を持ってもらえるようになってきたのだそうです。
【番外編】良い社内報を作るために意識しておくべき4つのこと
最後に、全受賞作品に寄せられた審査員のコメントから、共通して書かれている内容を挙げてみます。
①発行目的が明確で、内容がその目的に合っている
②見やすい
③会社の指針が目立っている
④社員にスポットを当てられている
上の4点を意識して実践することは、社内報としての質を上げるためにも重要なポイント。大日本印刷株式会社の事例とともに、社内報を作る際に参考にしてみてください。
成功事例のポイントを活かして、社内報を改善しよう!
優れた社内報を作っている企業は、作る前のコンセプト設計を綿密に行っていることが分かりました。社内報の位置づけをしっかりと決めて制作に取り掛かっているからこそ、社内に良い影響を与える社内報を作ることができているのです。
皆さんも社内報を作るときには、
1.会社にどんな課題があるのか考える
2.社内報の狙いを考える
3.編集方針を決める
という手順をしっかりと踏んで、制作するよう心がけてみてはいかがでしょうか。