戦略総務②〜社内環境を攻めの視点で見直す〜
本コラムでは、昨今注目を集めている「戦略総務」について解説をお届けしています。第2回目となる今回は、戦略総務に求められる役割の一つ「社内の環境整備や改善」に焦点を当てて解説します。戦略総務が持つべき攻めの視点を理解し、どのようなアクションを起こしていけば良いのかを具体的に考えていきましょう。
戦略総務のおさらい
戦略総務とは、企業の課題を率先して発見・解決に取り組むことを役割とした総務のことです。備品管理や各部署のサポート、来客対応といった管理業務を主体とする従来の総務とは違い、能動的な行動が求められるため「攻めの総務」とも言われます。
戦略総務が関心を集めている理由には、昨今の著しい情勢の変化や働き方の多様化などあらゆる環境要因が挙げられます。特に、アウトソーシングサービスの充実によってこれまで総務が行ってきたルーティンワークの価値が低下してきたことも大きな要素と言えるでしょう。
そして、従来の体制が昨今の新しいビジネススタイルに合わなくなり、多くの企業で組織の再編を余儀なくされているようです。そこで、業務改革を実行する主導者として戦略総務が求められているのです。
戦略総務の概略について再確認したい場合は、以下の記事をご参照ください。
社内環境整備・改善業務に向けてどんな視点を持つ必要があるか?
戦略総務に求められる役割の一つに「社内の環境整備や改善」があります。具体的な戦略例を見る前に、まずは業務を進める上で必要なスタンスについて見ていきましょう。ここでは、以下の3つのポイントをピックアップして解説します。
1. 社員のウェルビーイングや生産性向上、コスト削減等に向けて、ルールを策定するという視点
従来の総務も社内の環境整備や改善を行っていましたが、戦略総務ではより能動的に課題を察知し、場合によっては既存の体制を疑ってみる視点を持って進めていかなければなりません。
特に昨今、働き方の多様化によって個々の価値観が幅広く変化したことで、社員のウェルビーイングを向上させることが企業にとって優先課題となっています。施策を考えるうえで重要なのは、過去になかったルールを戦略総務が新しく策定するという視点を持つことです。そのためには、社員とのコミュニケーションを活発に行い、潜在的な意見や要望を汲み取る力が求められます。
2. 普段から無駄やコストをかけすぎている業務はないか、アンテナを張る
企業の営業活動において、コスト削減や業務の効率化は利益に直結する重要な課題です。戦略総務においても消耗品や備品の管理といった従来の業務を行いますが、「不足した消耗品を補充する」「壊れた備品を直す」など受動的な業務だけでは戦略総務とは言えません。常にアンテナを張り、企業の利益に貢献するという視点を持って業務の効率化を実行していかなければなりません。
3. 社員から業務遂行上の環境面におけるハードルはないか、ヒアリングや調査をしておく
社員へのヒアリングは企業の課題を明らかにするために有効な手段です。業務を遂行するうえでハードルとなっているものはないか、改善してほしいことはないかを聞き出し、社員が働きやすい環境の構築を目指します。全社員へのヒアリングが難しい場合はアンケートやランチ会開催などの方法をとっても良いでしょう。課題がリストアップできたら、優先順位をつけて段階的に進めていくことがポイントです。
具体的な戦略例
では次に、戦略総務がどのような業務を進めていけば良いのか具体的な例を見ていきましょう。
社員の業務量の見える化
業務の無駄を見極めるためには、まず社内の業務の洗い出しから行う必要があります。全ての業務を見える化することで、それまで把握できていなかった工程や属人化している作業など、効率化の妨げとなっている要素を明らかにできます。
特に、「この業務はこの人にしか分からない」という属人化は品質の低下や円滑な業務の遂行を阻むため、組織としてリスクが高いと言えます。業務内容や業務量を明確にしルーティンワークをマニュアル化するだけでも、業務効率の改善に繋がるでしょう。
電子化・クラウド化
社内で書類や書式が統一されていないと、読解に手間がかかって意外と面倒なものです。また、テレワークを始め働き方が多様化している昨今、紙の書類の持ち出しは非効率であるほか、セキュリティ面で様々なリスクを含みます。
そこで、そうしたリスク軽減や効率化を見据えて、電子化やクラウド化を導入する企業が増えています。電子化・クラウド化したデータはどのような場所からもアクセスが可能で、情報の共有が容易になり、働く場所を問わずに業務効率の改善が期待できるでしょう。
また、これらは実は社内の環境整備にとどまらず、新たな利益創出という潜在性を持っていることにも着目しましょう。
業務改善ツール導入
戦略総務への転換にあたり、総務担当者の負担が大きくなることは避けられません。従来の業務を維持するためには、業務改善ツールの導入も一つの手段です。例えば、多くの企業で導入されているSlackやChatworkは異なる場所で働く社員同士のコミュニケーションを効率化するための業務改善ツールの一種です。他にも、プロジェクト管理の効率化にはBacklogやAsana、顧客管理の効率化にはkintone、というように目的に沿った様々なツールが存在しています。
既存のシステムを使って対応できる業務もあるかもしれませんが、戦略総務ではこれまでの体制を刷新する取り組みを進めていかなければなりません。業界の流行や社内の要望を加味しながら、新たな業務改善ツールを積極的に導入することが望ましいでしょう。
アウトソーシングへの検討(良質な外部業者との連携ができる状態に)
戦略総務への転換を進めるにあたっては、一定のリソースを確保する必要があります。しかし、多くの業界で人材不足が叫ばれている中、戦略総務のために社内で人材を賄うことは難しいでしょう。そこで、需要が高まっているのがアウトソーシングサービスです。従来の総務のルーティンワークを外部に委託することで、総務が攻めの業務に注力できる環境が整います。多くのアウトソーシングサービスが登場しているため、常日頃から信頼できる業者と話をしておくことが重要です。理想的には、自社が目指したいビジョンや方向性を共有し、共に業務ができるパートナーをできる限り多く連携しておくと良いでしょう。
新たに導入した施策については、定期的に説明会などで共有する
新たな施策は導入して終わりではなく、社内に定着するまで徹底していく必要があります。定期的に説明会を行うなどの方法がありますが、社外の専門家を招いて社内研修を進めることも一案です。導入後のフローも含めて、業務改革を進めていきましょう。
攻めの視点を持った戦略総務になろう
企業の存続を担う重要な役割として、戦略総務が注目を集めています。戦略総務は従来の総務とは求められる役割が大きく異なり、より能動的に業務改革を進めていかなければなりません。今回ご紹介した事例を参考に、社内の環境整備や業務改善に貢献していきましょう。