効果金額630万円!?”常に考える”ことで常に利益が成長する「未来工業株式会社」を訪問【後編】


あけずに通れ

突然ですが、通路扉に上の画像のような張り紙が貼ってあったらあなたはどうしますか?
「え?ドアを?あけずに?どうやって通るの?」
と疑問を持つ人が大半なのではないでしょうか。

この張り紙が貼ってあるのは、日本一社員が幸福な会社として有名な、岐阜県にある未来工業株式会社
常に考える“というスローガンと、”社員のやる気を出す“という理念を元に、斬新な制度の数々を実施しています。

前編では、カレンダーの”休日と休日で挟まれた平日“が”休日“にひっくり返ってしまうオセロ休暇や、年末年始の20連休、社員旅行のフォトコンテストの賞品が会社設立権365日休暇権など、同社が実施している具体的な取り組みについてお伝えしました。

後編となる本編では実際の社内の様子を紹介しながら、ユニークな取り組みによる具体的な効果や影響をお伝えします。

※ちなみに上の張り紙は創業者、山田昭男氏が設置したもので、「ドアを開けっ放しのまま通るな」という意味だそうです。しかし「あけずに通れ」とだけ記すことにより、社員の方々の頭には「?」が生じるのだとか。そこで小さいながらも会社のスローガンである”常に考える”が行われるのです。

「?」の後には、その理由を考える。あえて廊下を暗くすることで、脳みそで理解する節電を

具体的な成果を見せていただくため、社内を見せてもらうとまず気になったのは廊下。

なんだか暗いと感じる方が多いのではないでしょうか。
そう、節電のために社内全体で使用しない場所は電気を消すことを心がけているのだそうです。

通常、会社の廊下といえば明るいイメージですが、ここが暗いだけで多くの人は「何故だろう」と疑問を持ちます。そこで”常に考える“が行われるだけでなく「節電のためだ」と気づいた人は他の場所でも自分の電気の使い方を見直すようになるのだそう。

1人1人が自分で考えて行動することに繋がるだけでなく、会社の電気代節約にもなるというこの施策。ご自分の会社でも今日から実践できるのではないでしょうか。

意匠登録国内13位!”常に考える”ことが仕事に活きると、自然と利益が伸びてくる?

廊下を進み、見せていただいたのは同社が開発したという商品が並べられている場所。
常に考える“を元に、1人1人が新しいアイディアを出すことを心がけている同社では、普通の商品に何か1つ工夫を施すことを心がけているのだとか。


例えばこちらの水準器。(商品名:ボックスレベルゲージ/品番:LG-B)
3カ所に水準器がついているので、縦・横・斜めと現場の環境に合わせて様々な角度で水準を計ることができます。

それだけでも非常に便利なのに、分解できてしまうというこちらの商品。

ライトも内蔵されており、暗い現場でも大活躍です。


さらに磁石も内蔵されており、水準器を分解して物体にはさむことで、手で固定しなくても水準を計ることが可能に。なにかと両手がふさがりがちな工事現場で、この機能は非常にありがたいのではないでしょうか。

水準器の他にも”常に考える”ことで様々なアイディア商品を生み出している同社。
その価値は業界でも認められ

数々の特許・実用新案・意匠を取得しています。


特に意匠登録の件数は毎年すごい数を記録しており、2012年には数々の大手企業に並ぶ13位という結果を残しました。これも、一部の社員だけでなく社員全員が”常に考える”こと、既存の商品やルーティンワークに対して疑問を持つことから得られた成果だと言えるでしょう。

これだけの成果を残しても年間休日140日、1日の労働時間が7時間15分だという同社は

県の労働基準局から「ゆとり創造賞」という賞も受賞しています。

しっかり働きしっかり休む、素晴らしいワークライフバランスではないでしょうか。

最優秀提案は効果金額630万円!?社員の数の10倍以上の改善案が集まる、改善提案制度とは?

続いて、食堂に案内してもらうと

多くの人の目につく場所にこのような張り紙が。

実は同社、日々のルーティンワークや作業環境に対して疑問を持った際、誰でも気軽に改善策を提案できるよう、改善提案制度を実施しています。
簡単に言うと目安箱のようなものですが、ただこれを設置するだけではありません。

なんと、提案をした社員にはその提案の善し悪しに関わらず、必ず500円が支払われるのだとか。1提案につき500円なので、提案を出せば出すほど社員はお金を貰えるのです。

さらに、200件出すと1案ずつの500円とは別に15万円の賞金が。それだけの数を提案すると、もちろん採用されない提案もたくさんありますが、中には画期的な改善案もあり、そこから新たな業務効率化が生まれるのだそう。


2014年は年間で約9,000件の提案があり、社員全体の数、約850人に対しその何倍ものアイディアが生み出されるという結果に。一見太っ腹なシステムに思えますが、最優秀賞に輝いた提案では約630万円の効果金額が生まれ、しっかりと利益も生み出しています。

また、ささいなことでも大きなことでも、提案したら必ず500円が貰えるので、社員の人たちも常に「何か改善できるところはないか」「困っていることはないか」等疑問を持ちながら仕事をすることができます。これがまた、”常に考える”に繋がっているのです。

プライベートの充実も会社が応援!約70あるという社内部活動

さらに、食堂をよく見せていただくと

自然愛好家クラブというスペースに写真が飾られていました。
実は同社、約70にものぼる部活動が自主的に行われており、各部活ごとに会社から月に1万円の補助金がでるそうです。

休みが多いため、自分の時間を家族や友人と過ごすのはもちろん、趣味を持つ人は共通の趣味を持つ仲間と楽しめるよう、こういった取り組みも行われているのだとか。プライベートの時間を充実させるために率先して環境作りを手伝ってくれる会社はなかなかないのではないでしょうか。

こういった面でも、自然と社員の愛社精神が育まれているのでしょう。

社内の至る所に!社員1人1人のアイディアで会社がどんどん良くなる環境

食堂を出てさらに社内を案内してもらうと、所々に

“常に考える”のスローガンが見られ、

その結果生まれた新たな取り組みも見受けられました。

上の画像の、スローガンの下に設置された3つのイス。こちらは同社の正面玄関脇に設置されており、打ち合わせに来たお客様が帰りのタクシーを待つためにあるのだそう。
車社会である岐阜県。バスの本数も少なく、バス停が離れているため、駅からタクシーを利用するお客様も多いです。しかし、行きは駅前で簡単にタクシーをつかまえることができるものの、帰りは非常に困るそう。

それに気づいた社員の方が、先ほど紹介した改善提案制度を利用し、こちらの席が作られました。さらにそれを見て気づいた他の社員の方の提案により、こちらの席の上にはタクシーを呼ぶための電話番号も貼られています。

これらの提案は直接的な利益には結びつかないかもしれませんが、クライアントワークにおいてかかせないホスピテリティについて、1人1人が細かい所まで考えているからこそ生まれた案だと言えるでしょう。
こういった考え方が日々のクライアントワークにも影響を及ぼし、お客様からの信頼に繋がると言えるのではないでしょうか。

会社にとって一番大切なものは、目に見えない利益?


直接的に目に見える利益を優先させがちな会社経営と、それに伴う社内制度。

未来工業のように社員が自発的に考え、行動するための環境を整えようとしても、実際の成果や効果金額が具体的に予想できないことから、躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし先代の社長、山田氏も「小さな倹約 大きな浪費」という言葉を残しています。

今でこそ、1人1人がアイディアを出すことが当たり前の環境となっている同社ですが、創業当初は山田氏がこのスピリッツを当時の社員全員に普及させたのだとか。そのスピリッツは社長から社員へ、その社員からさらに新しい社員へと受け継がれ、会社全体がそういった雰囲気を作り出す空間となりました。

同社の在り方から、”できるだけ社員の自由度を高め、自由だからこそ自らの仕事に責任を持ち、最高のパフォーマンスをする“ための環境づくりに社内制度は大きく関係していると言えるのではないでしょうか。
その効果や成果は必ず後からついてくるということを、同社が証明しています。

これらを参考に、あなたの会社の業務内容、企業理念を元に”会社にとって、社員にとって本当に必要な制度とはなにか“今一度考えてみてはいかがでしょうか。十人十色と言いますが、会社1つ1つにもカラーがあります。一般的な社内制度では補えない、あなたの会社だからこそ必要な制度があるかもしれません。