オフィス移転をするときのチェックポイントは?年間実績300件のプロが気になる疑問を解決!
オフィス移転をお考えの皆さん。
移転先を選ぶ基準は、どのようなものを持っているでしょうか。
家賃、スペース、エリア、駅からの距離……
きっといろいろな条件があることでしょう。
今回は、失敗しないオフィス移転をするためのチェックポイントを紹介します。教えてくださるのは、1969年(昭和44年)7月に創業以来48年間にわたり、累計2万件超の企業のオフィス移転の支援をしてきた、株式会社ダグ・エンタープライズの代表取締役・阿部龍治さん。
皆さんの企業でもぜひ参考にしてみてください。
オフィス移転をよく検討して行わなければならない理由
オフィス移転を十分に検討して行う重要性について、まずは考えてみましょう。
当然のことながらオフィス移転には、コストがかかります。
かかるコストは金銭的なものに限らず、担当者が本業をこなしながら物件探しや移転準備に時間を割くことになるので、人的コストも多くかかってしまうもの。
したがって、移転をする際には「新しいオフィス何を求めるのか」ということをしっかり定めて、十分に検討することが必要なのです。
フェーズに応じて事情が変わる!?企業がオフィス移転をする理由とメリット
オフィス移転をする理由とメリットは、企業のライフサイクルのステージによって変わります。企業のライフサイクルには、
①導入期
②成長期
③成熟期
④衰退期
の4つのステージがあると言われています。ステージごとにオフィスに求める条件が変わってくるので、皆さんの会社の状況と照らし合わせて、それぞれのステージごとの移転の理由とメリットを見てみてください。
①導入期
導入期は、創業に多くの初期費用がかかる一方で売上は低水準なため、個人事業主でスタートするか、合同会社、株式会社を設立するか迷う方が多いです。
そのため、オフィスを選ぶ際には費用を抑える傾向があるのが特徴。オフィスの種類とそれぞれのメリットを、価格の低い順に見ていきましょう。
■オフィスの種類とメリット
①自宅
コスト節約。自宅からオフィスへの移動時間の節約
②バーチャルオフィス
実際には自宅でビジネスをしながら、名刺の住所を自宅以外にすることができる
③シェアオフィス(コワーキングスペース)
他の企業と同じ空間を共有することによるコスト削減。ビジネスコラボレーションなどの可能性あり
④レンタルオフィス
保証金や敷金などの初期投資を低く抑えられる。知名度のあるビルの場合はブランド力あり
⑤一般小規模オフィス
同じフロアに別のテナントが入っていないことが多く、共用部分の利用においてストレスがないことも女性には喜ばれる
このように、各オフィスのメリットを比較するとともに、自身の商品やサービスや既存クライアントからの見込収益などを予測してオフィスを決定します。
②成長期
成長期では、売上も急成長し従業員数が増加。一方で、競合も増えてくるため、ブランディングをすることが重要になります。このステージにおける、オフィス移転の理由とメリットについて見ていきましょう。
■移転の理由
①スペースの不足
②ビル設備のグレードアップ
③ブランディングに適したビルやエリアへの移転
■移転のメリット
①オフィスを広くすることによる従業員待遇の向上
②優秀な従業員の確保への期待
このステージで行われるオフィス移転では、一般的に賃料予算も増加します。
③成熟期
成熟期の企業は、業務や売上が安定しているステージです。オフィス移転の理由・メリットを見ていきましょう。
■移転の理由
オフィス環境の向上
■移転のメリット
従業員の満足度を高めて、モチベーションを上げる
新オフィスは、現オフィスと同程度の予算でオフィス環境やグレードなどを向上させようとするのが一般的です。
④衰退期
衰退期は、サブプライムの破綻などの外的要因や競合との関係により、業績が悪化しているステージ。この時期の移転の理由とメリットはいたってシンプルです。
■移転の理由
経営悪化
■移転のメリット
経費削減
重要なのは、従業員のモチベーションを可能な限り保ちながら、オフィス環境をなるべく変えない移転を実現すること。駅から距離が遠くなったり、エリアを変えなければならかったりする場合もあります。
移転により通勤が困難になる従業員が退職する可能性も考慮し、できる限り影響が少ない決断をすることが必要となります。
オフィス移転を成功させる7つのチェックポイント
最後に、オフィス移転を成功させるための7つのチェックポイントを紹介します。
移転する際には、これから紹介するポイントを意識するようにしましょう。
①企業のコアバリュー・経営理念・ミッション・ビジョンとの一致性
②要望条件の優先順位付けや期待効果の共有
③エリアの選定
④最寄駅からの距離
⑤人数に対する広さ
⑥部屋の形
⑦信頼できる仲介会社の選定及び内装業者や引越業者などの紹介依頼
①企業のコアバリュー・経営理念・ミッション・ビジョンとの一致性
理想的なオフィスの形は、企業の理念を体現させたものであることです。
オフィス移転プロジェクト担当と経営陣のベクトルを合わせるため、企業のコアバリュー・経営理念・ミッション・ビジョンの再確認をしましょう。
②要望条件の優先順位付けや期待効果の共有
どんなに良い物件であっても、すべての希望条件を満たすオフィスはありません。
オフィス移転をする理由を明確にし、条件に優先順位をつけることが重要です。また、移転による期待効果も設定し、検証しましょう。
③エリアの選定
エリアの選定は、
・メイン取引先とのアクセスが容易か
・企業ブランディングに合う周辺環境か
・賃料水準が予算にあっているか
・現在の電話番号が変わらないか
・従業員の通勤への影響はどの程度か
という5つのポイントのバランスを考慮して行うことをおすすめします。
④最寄駅からの距離
一般的なオフィスの場合、最寄駅からの距離は、できれば5分以内、遠くても10分以内が目安です。従業員だけでなく、取引先の来社や今後の新規募集への影響も考慮しましょう。
⑤人数に対する広さ
1人当たりのオフィス面積は、一般的に2~5坪程度です。
オフィス契約面積の中には、執務スペース、会議室、応接、リフレッシュルーム、役員室、通路などを含み、特に中小ビルはトイレや水回りも含まれていることが多いので、個別に検証が必要となります。
⑥部屋の形
同じ執務スペースの面積でも、部屋の形によって有効利用可能な比率は異なります。
一般的には正方形ではなく、長方形の整形オフィスがレイアウトが組みやすく好まれますが、IT系企業などは配線の関係で細長い方が良い場合もあります。一方で、コミュニケーションをスペース全体で取る場合には、細長いオフィスは避けることをおすすめします。
⑦信頼できる仲介会社の選定、および内装業者や引越業者などの紹介依頼
オフィス移転のプロジェクト担当者にも本業があるので、仲介会社やオフィス移転コンサルタントなど、信頼と実績のあるパートナーを選定することをお勧めします。
チェックポイントを意識し、企業に合った条件のオフィスを選ぼう
冒頭でも説明したように、オフィス移転は大きなコストがかかります。
ただ何となく選んで後になってから後悔しないように、オフィス選びは丁寧に行いましょう。
移転をする際には、今回紹介したようなチェックポイントを意識し、皆さんの企業は現在どのような状態で、オフィスにどのような条件を求めるのかを十分に考え整理した上で、選ぶようにしてみてはいかがでしょうか。
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【監修者紹介】阿部龍治(あべりゅうじ)
1964年神奈川県横須賀市生まれ。1994年にダク・エンタープライズ・首都圏ビルマネジメントに取締役として入社。現在、同社代表取締役(2代目社長)。創業48年。年間500件(累計3万件超)の仲介実績/建物管理60棟。事業用不動産を中心に貸主、借主双方に総合的なコンサルティングサービスを提供し、その専門的な知識やノウハウには定評がある。オフィス移転コンサルティングサービス、2010年実績 約300件。
株式会社ダク・エンタープライズ / 株式会社首都圏ビルマネジメント
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