高齢者雇用は会社に何をもたらすか?メリットや活用できる助成金を解説!
少子化が進み労働力確保が難しくなっている昨今、多くの企業が注目しているのが「高齢者雇用」です。実際に、シニア採用に力を入れる企業は増加しており、シニアならではの経験・スキル・ノウハウを生かしてビジネスを加速させようとする動きが活発になっています。
今回は、高齢者雇用が促進される理由や雇用するメリット、また高齢者雇用で活用できる助成金などについて解説していきます。
増加する高齢者雇用
高齢者雇用が増加する昨今ですが、実際にどのくらいの高齢者が就業しているのでしょうか。総務省統計局の調査(※)によると、65歳以上の就業状況は2008年が553万人であったのに対し、2018年は862万人。約10年で300万人近く、高齢者で就業する人が増えたことが分かります。
また、就業者総数に占める高齢就業者の割合は2008年が8.7%であったのに対し、2018年は12.9%と、過去最高になっています。
※統計局ホームページ/令和元年/統計トピックスNo.121
65歳以上まで働ける会社は7割以上
高齢者雇用を推進するために、従来の定年制を廃止したり、定年を引き上げたりしている企業が増えています。内閣府の調査(※)によると、従業員31人以上の企業約15万社のうち「高年齢者雇用確保措置」を実施する企業は99.5%にも及んでおり、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は74.1%となっています。
※内閣府 高齢者の就業|平成29年版高齢社会白書(全体版)
高齢者雇用が進んでいる理由
高齢者雇用・シニア採用が増加しているのには、どのような背景や課題があるのでしょうか。
少子化による労働人口の減少
日本では、少子化が進み労働人口が減少しているのはご存知のとおりです。厚生労働省は、2025年に65歳以上の高齢者数は3,657万人(国内人口の約3分の1)になるとの見通しを示しており、すでに多くの経営者が人材不足に頭を抱えています。若者の働き手が減っていることから、自ずと高齢者雇用に注目が集まるようになっています。
働きたい高齢者の増加
「人生100年時代」と言われるようになり、高齢者の意識も変わってきました。ひと昔前は、60歳で定年を迎えたら、のんびりとシニアライフを過ごしたいと考える方が大半でしたが、近年は、60歳を超えてもリタイアせずに働きたいと考える人が増加。内閣府の調査(※)でも、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しています。
※内閣府 高齢者の就業|平成29年版高齢社会白書(全体版)
高年齢者雇用安定法の改正
2013年に、高齢者の安定した雇用確保を推進する法律「高年齢者雇用安定法」の改正がおこなわれました。このときの改正によって、定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施することが求められました。
今回、さらに一部の改正がおこなわれ、2021年4月1日から施行されます。この改正によって、定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主、または継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主は以下のいずれかの措置が求められます。
1.70歳まで定年年齢を引き上げ
2.70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入(他の事業主によるものを含む)
3.定年制を廃止
4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5.70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供等)する団体が行う社会貢献事業
今回の改正は、高齢者の様々な特性・ニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について多様な選択肢を整えるもの。これまで以上に、高齢者雇用が後押しされることになるはずです。
高齢者雇用で得られるメリット
高齢者雇用には、一般的に以下の3つのメリットがあると言われます。
人材不足の解消
上述のとおり、労働力不足は日本社会の課題。その打開策として期待が寄せられているのが、シニア人材の活用です。早い段階から高齢者雇用の実績をつくり、シニア人材が働きやすい体制を整えておくことが、今後の採用戦略のプラスに働くことは間違いないでしょう。
経験・スキル・人脈の活用
高齢者は、長いキャリアのなかで豊富な経験を重ね、技術を磨いてきています。即戦力として会社に貢献してくれるのはもちろん、シニア人材ならではの人脈やノウハウを活用できれば、事業を大きく発展させるきっかけになるでしょう。
若手の育成・成長
シニア人材は、若手人材を導く存在としても期待がかかります。独自の技術を伝えたり、経験に裏打ちされたノウハウ・考え方を伝えたりすることで若手人材の成長につながり、社員全体のレベルを押し上げることができます。
高齢者雇用で活用できる助成金
高齢者雇用の際に活用できる代表的な助成金が、「65歳超雇用推進助成金」と「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」です。
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、意欲と能力のある高年齢者が年齢にかかわりなく働ける「生涯現役社会」の環境作りの整備を進める場合に支給される助成金で、3つのコースがあります。
<65歳超継続雇用促進コース>
「65歳以上への定年引上げ」「定年の定めの廃止」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」のいずれかを導入した事業主に助成金が支給されます。
<高年齢者評価制度等雇用管理改善コース>
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置(※)を実施した事業主に助成金が支給されます。
※高年齢者の職業能力を評価する仕組み及びこれを活用した賃金・人事処遇制度の導入又は改善、高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入又は改善 など
<高年齢者無期雇用転換コース>
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に助成金が支給されます。
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
65歳以上の高齢者を、ハローワークなどの紹介により、1年以上継続して雇用することが確実な労働者として雇い入れる事業主に助成金が支給されます。
◎条件や支給額など「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」の詳細はこちら
これからの会社の発展には高齢者は不可欠!
高齢者雇用が増加しているのは事実ですが、まだまだ採用ニーズは若手人材に集まる傾向にあります。しかしながら、少子化による若手人材の減少は避けようがなく、若手人材にこだわっていると会社の成長が停滞してしまいます。
会社の将来を担うのは、若い力ばかりではありません。これからの企業経営は、高齢者雇用・シニア活用によって明暗が分かれると言っても過言ではないでしょう。