2019年10月23日働き方改革
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サーバントリーダーシップとは?「10の特性」から事例まで紹介


少子高齢化による労働人口の減少から、企業には従業員の離職率を抑えた定着率の向上が求められています。そのための取り組みとして、従業員満足度の向上が挙げられます。

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中でも上司から部下へのマネジメントは、制度や施策の実施だけでは改善が難しい要因の1つです。そこで、近年「理想の上司のあり方」として「サーバントリーダーシップ」という考え方に注目が集まっています。
今回は、サーバントリーダーシップに該当する10の特性から、「支配型リーダーシップ」との違いを含め解説します。

サーバントリーダーシップとは?


サーバントリーダーシップとは、「サーバント=使用人」という表記からわかる通り、アメリカのロバート・K・グリーンリーフが提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学です。上司といえどチームや部署単位では1人の従業員にかわりはありません。企業成長のために、先ずは部下の能力を認め引き出せるよう、部下を奉仕・支援することを目的としたリーダーシップです。結果的に働きやすい環境づくりや、信頼関係の構築につながり、部下の主体的な行動や成長が見込めます。
一方で、サーバントリーダーシップとは対局の考え方に「支配型リーダーシップ」があります。2つの違いについて見ていきましょう。

支配型リーダーシップとの違い

従来、企業の発展には強い意志と発言力を持ち、部下を動かしチームを引っ張るようなリーダーシップが求められていました。そのためリーダーに求められるのは強い先導力や卓越した知識やスキルと、まさにサーバントリーダーシップとは対になる考え方です。

多くの場合、支配型リーダーシップでは上司がプレイヤーとなり、部下に指示・命令を与え成果を生み出しますが、サーバントリーダーシップでは「個人」よりも「チーム」としての成果を重視します。部下の能力を認知し引き出すような観察能力や誘引力が求められるといえます。また、サーバントリーダーシップで重要なのが、部下の「目標や自己実現」です。支配型リーダーシップでは、部下は上司の指示・命令に従い「義務感」で業務をこなしますが、サーバントリーダーシップでは部下の目標や自己実現を明確にし、主体的な行動を促します。結果的にチームとして同じ目標に進むため、仕事へのモチベーション維持や、生産性の向上につながるのです。
ではなぜ、近年サーバントリーダーシップが重視されているのでしょうか。サーバントリーダーシップが採用されるようになった背景を紹介します。

サーバントリーダーシップが求められる背景


ロバート・K・グリーンリーフは、サーバントリーダーシップを1970年に提唱しています。彼のリーダーシップへの考え方やアイデアは高い評価を受けたものの、当時はまだ支配型リーダーシップの採用が根強く残っていました。では、なぜ今になってサーバントリーダーシップに注目が集まっているのか。ここでは2つの背景を紹介します。

多様な働き方の推進

働き方改革の施行や、労働人口の減少から、現代は従業員個人の多様な価値観が重視されています。事実、個人の多様な能力や経験などの「目には見えない価値」を持つ人材を受け入れ、経営力を上げる「ダイバーシティ経営」を採用する企業が増えています。

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ただしダイバーシティ経営をはじめとする、多様な人材の価値を最大限に活かすには、従業員同士の密なコミュニケーションと信頼関係、明確な評価制度の構築が欠かせません。そこで、上司「個人」の能力ではなく、部下の「能力や意志=多様な価値観」を重視するサーバントリーダーシップに注目が」集まるようになりました。チームとしての成果が求められる現代において、理想のリーダー像も変化しているのです。

デジタル技術の進歩

従来は上司による的確で合理性のある指示・命令に従えば成果が出ていたため、多くの場合上司の経験や体験に基づくリーダーシップが重視されていました。しかしデジタル技術の進歩とともに、現代は多くの人が行ってきた仕事が機械に代替される時代となっています。その結果、従業員には機械では生み出せない創造的で革新的なアイディアによるイノベーションが求められるようになりました。顧客ニーズの多様化や激しい時代の変化から、これまで上司が培ってきた経験や体験による指示・命令では解決できない課題も生まれるでしょう。サーバントリーダーシップは、チームの意見や知識、能力を上司が引き出すため、一人では解決が困難な課題や、革新的なイノベーションの創出につながるのです。

サーバントリーダーシップ「10の特徴」


ここまでサーバントリーダーシップと従来の支配型リーダーシップとの違いを紹介しましたが、サーバントリーダーシップには具体的に「10特徴が」あります。

傾聴
先ずはメンバーの意見に耳を傾ける意識が重要です。部下が何を考え望んでいるのか、目標の明確化にもつながるでしょう。また自身の考えにも耳を傾け、チームメンバーを支援しながら自身の成長にもつながります。共感
上司としての権力を行使するのではなく、メンバーの立場になって理解することが傾聴に反映されます。

癒し
メンバーの現状や心体への配慮も欠かせません。最大限の生産性や能力発揮のやめにも、組織内で欠けている部分を互いに補足し合うことがより高い成長・結果をもたらします。

気づき
全体を把握する観察能力も重要ですが、自分への気づきを意識することで、自身の価値観が多様化しリーダシップ向上を支援します。

説得
上司としての権利を行使して服従させるのではなく、相手の同意を得られるような説得
です。

概念化
常に目標への志向を忘れずに、メンバーの目標、組織のゴールをイメージしながらリーダーとしての役割を最適化します。

先見力、予見力
過去の教訓や事例、現在の業務から将来を予測する。

執事役
メンバーの成長を支援し、信頼関係が構築されている状態。

人々の成長に関わる
業務上の成果を超えた、メンバーが持つ能力や可能性、価値を信じて成長に深く関わります。

コミュニティづくり
メンバーが働きやすい、成長できる環境、コミュニティを形成します。

参考記事:NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会「スピアーズによるサーバントリーダーの属性」

サーバントリーダーシップの成功事例


サーバントリーダーシップの概念や特徴について紹介してきましたが、企業で採用する場合、その定義や役割は組織の状態や風土によって変わります。では実際に、サーバントリーダーシップの採用が企業の成果につながった成功事例を紹介します。

新規事業の拡大:株式会社サイバーエージェント

100社以上の子会社を抱える株式会社サーバーエージェント。同社は優秀な人材の採用と、その人材の活性化に注力しており、従業員の成長と意見を大切にしています。新規事業の創出には「スタートアップJJJ」という独自制度を設けており、子会社や事業をランク分けすることで、互いに競い合う環境を構築。ただし「2四半期連続で減収減益になったら、原則撤退を検討する」といった撤退ルールを定めることで、そのルールの範囲内で従業員の自己実現を支援しています。ルールを明確にし、従業員の自由を守ることで、革新的なアイディアの創出を可能にしているのです。

参考記事:NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会「第6回サーバントリーダーシップフォーラム」

サーバントな文化を構築:スターバックス

巨大コーヒーチェーンのスターバックスも、サーバントリーダーシップを採用している企業の一つです。スターバックス・インターナショナル元社長のハワード・ビーハー氏は、「“サーバントな文化人を大切にする文化”を原動力に、スターバックスを世界的なコーヒーショップにした」と語っています。またリーダーシップを人材には「自分や社会によりよい変化をもたらすため、自信を高め、人と人とのつながりを生み出しながら、勇気をもって行動する」ことを求め、支援しています。

参考記事:スターバックス「Youth Leadership」

時代の変化に合わせた柔軟なリーダーシップを

理想のリーダーシップのあり方は、その時代によって変化します。それは、いつの時代も企業の成長を支えるのは「ヒト」だからです。デジタル技術や情報といった新たな企業の経営資源が生まれる中、それらを扱うヒトの採用や育成が、多様化する時代には求められます。今回紹介したサーバントリーダーシップを参考に、自社における最適なマネジメントや人材配置に活かしてみてはいかがでしょうか。

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