知っているようで知らない、定款の概要と記載事項などを解説
定款とは、会社の事業を行う上での根本規則を定めたものです。定款は会社の設立時に必ず作成する必要があります。それほど重要な定款ですが、知っているようで知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、定款の基本的な知識や、定款に記載する事項などを解説します。また、定款変更の方法や必要書類も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
定款を作成する目的と種類を解説
会社を設立する際は定款の作成が必要です。ここでは定款の概要や、定款が法的な効力を持つ仕組みを解説します。また、2種類ある定款のうち、原始定款と現行定款の違いについても紹介していきましょう。
定款とは会社の設立時に作成する根本的な規則
定款とは、会社設立する際に作成する根本規則のことです。会社の目的や組織、株主の地位といった会社の根幹を成す規則を定款として定めます。会社法26条により、定款の作成はすべての会社の義務となっています。また、定款が法的な効力を持つためには、発起人全員の署名・捺印と、公証人による認証が必要です。
原始定款は会社設立時につくる定款
原始定款とは、会社の設立時に作成する定款です。原始定款は公証人による認証を受ける必要があり、認証を経てはじめて効力が生じます。原始定款そのものは書き換えられず、本店所在地の都道府県にある公証役場で20年間保管されます。保管期間が経過した場合は、定款を再作成する必要があります。
現行定款は現在効力を持つ定款
現行定款とは、現時点で有効な内容の定款です。定款変更をしていない場合は、原始定款が現行定款になります。定款変更の手続きでは、原始定款そのものを書き換えられませんが、変更箇所を反映した定款を新たに作成できます。この際の定款変更については公証人の認証が必要ありません。
定款の記載事項3種類を解説
定款に記載される項目は3種類あります。まず、定款に必ず記載しなければならないのが絶対的記載事項です。そのほか、記載することではじめて効力を持つ相対的記載事項や、任意で記載する任意的記載事項について解説します。
定款に必ず記載する必要がある「絶対的記載事項」
会社法27条によって、定款への記載が義務づけられているのが絶対的記載事項です。絶対的記載事項とは、会社の「目的」、「商号」、「本店の所在地」、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」、「発起人の氏名又は名称及び住所」、「発行可能株式総数」の6種類を指します。絶対的記載事項が記載されていなければ、定款は効力が認められません。
定款に記載しなければ効力がない「相対的記載事項」
相対的記載事項とは、定款に記載しなければ効力を発揮しない事柄を意味します。相対的記載事項は多数ありますが、とくに金銭以外の現物出資がある場合は、定款に記載が必要です。ほかにも、株式の譲渡の制限や、取締役などの任期の伸長、公告の方法などが挙げられます。
会社として自主的に記載する「任意的記載事項」
任意的記載事項とは、会社として自主的に定款に追加する事柄を指しますが、定款として定めることで、規則として内容を明確化できます。ただし、任意的記載事項であっても、内容を変更したい場合は定款変更の手続きが必要です。
定款変更の概要や手順・必要書類を解説
商号を変更したり、事業目的を再検討したりする場合、定款の変更が必要です。しかし、定款は会社の根本規則であり、変更するには一定の手続きを行わなければなりません。ここでは定款変更の概要や、手順・必要書類などを解説します。
定款変更のためには株主総会が必要
定款変更をするためには、まず最高意思決定機関である株主総会を開かなければなりません。これは会社法466条に定められています。定款変更は特別決議にあたるため、全体の議決権の過半数を持つ株主が出席し、さらに議決権のうち3分の2以上の賛成がなければ認められません。定款変更が認められた場合は、変更点が記載された議事録を作成します。
定款変更の内容によっては、法務局での登記申請が必要です。とくに「商号」、「本店の所在地」、事業の「目的」といった絶対的記載事項を変更する場合、新たに登記申請しなければなりません。また、決算月のように納税上の変更がある場合は、税務署に異動届出書を提出しましょう。
定款変更には株主総会議事録と株主リストが必要
定款変更に必要なのは、株主総会議事録と株主リストの2点です。株主総会議事録は特別決議である旨がわかるものでなければなりません。また、平成27年度に商業登記規則が改正され、株主リストの提出も必要になりました。そのほか、法務局で登記申請をする場合は、登記申請書と収入印紙が別途必要になります。また、商号を変更する場合は新たに印鑑届書を用意しましょう。
会社の根本規則である定款の概要や記載事項を確認しよう
定款は会社を設立する時だけでなく、日々の会社運営においても重要な規則です。したがって定款について深い理解を得るためには会社法や、会社法に付随する法律で該当する条文をしっかりと理解する必要があります。今回解説した内容は定款に関する情報の一握りにすぎません。本格的に定款について知りたい方は、今回の記事を参考にして法律の学術書などで学びましょう。