テレワーク助成金を有効活用。柔軟な労働環境を実現!
2018年成立の働き方改革関連法案の一環、さらには2019年末頃から世界中で感染拡大した新型コロナウイルスの感染防止対策として、テレワークの導入を検討する企業が増えています。
東京都が2020年4月に、従業員30人以上の都内企業を対象として行なったテレワーク導入率調査では、導入しているという企業が全体の62.7%にものぼっています。
前月の24.0%と比較すると2.6倍もの企業が、1ヶ月の間でテレワークを導入しているのです。
このように多くの企業がテレワークを導入している一方で、導入できていない企業もあります。テレワークの導入が進まない理由として、実施にあたり必要なインターネット環境や周辺機器の整備といった課題があり、これらには多くのコストがかかります。
そこでおすすめなのは、テレワーク導入を支援する助成金の活用です。今回は、テレワークの概要やメリットをおさらいしながら、うまく活用したいテレワーク助成金について紹介します。
柔軟な働き方「テレワーク」をおさらい
テレワークは、情報通信技術を活用しながら、自宅やサテライトオフィスなどで働くワークスタイルです。テレワークを導入することで、従業員は場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能になり、ワーク・ライフ・バランスの向上が期待できます。
テレワークは1970年代のアメリカ西海岸が発祥とされています。40年以上前に生まれたこの働き方が、日本で注目されている理由として
・働き方改革
・感染症対策
という2つがあげられます。
働き方改革は、育児や介護と仕事を両立できるような環境を整備し、労働人口を確保するという目的があります。この目的の一環としてテレワークは注目されました。
さらに働き方改革から数年後、新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークの普及をさらに進めました。そして、新型コロナウイルス感染拡大対策を機に、テレワークを導入した企業のなかには、テレワークを継続する企業もあります。
たとえば、証券大手の大和証券グループ本社は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言解除後であっても、テレワークを継続する方針を発表しています。
参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200522/k10012439991000.html
このように、新たな働き方ともいえるテレワークは、主に次の3つにわけられます。
1.勤務先以外のオフィスを利用する「サテライトオフィス勤務」
サテライトオフィス勤務は、拠点となる勤務先以外のオフィスで働くワークスタイルです。企業専用のオフィスを設置するケースや、複数社で共同のオフィスを設けるケースもあります。
2.移動中に仕事をする「モバイルワーク」
モバイルワークは、移動中や外出中にパソコンやタブレット、スマートフォンを使って働くワークスタイルです。電車や飛行機、カフェなど、多くの場所でWi-Fiを使えるようになったため、移動中にメールチェックを行う、訪問企業の近くのカフェで作業する、といった働き方が可能となりました。
3.自宅で仕事をする「在宅勤務」
在宅勤務は、電話やメールで他の従業員や取引先と連絡を取りながら、自分の家で働くワークスタイルです。インターネット上で簡単に使えるチャットツールやテレビ電話ツールを活用することで、従業員、取引先とのコミュニケーションをスムーズに行えます。
◎:Web会議のメリットとデメリットとは?テレカンとの違いは?
テレワーク実施のメリット
テレワークを実施すると、企業にとっても従業員にとってもメリットがあります。それぞれのメリットを順番にみていきましょう。
テレワーク導入による企業側のメリット
テレワークを導入すれば、企業側は次のようなメリットを得られるでしょう。
*企業イメージ向上
*優秀な人材の確保
*業務効率化
*従業員満足度向上
*BCP(事業継続計画)の一環
テレワークを導入することで、多様なワークスタイルを受け入れている柔軟な企業として、イメージアップにつながるでしょう。その結果、優秀な従業員が集まり、定着するという効果も期待できます。
また、通勤時間や会議室に集まる時間などを削減できるため、業務効率化も図れます。通勤に代表されるような従業員のストレスが減ることで、従業員満足度も向上するでしょう。さらに、地震や台風、ウイルスの蔓延といった事態であっても業務を継続できるため、BCP(事業継続計画)の一環としても役立ちます。
テレワーク導入による従業員側のメリット
テレワークを導入すると、従業員側にもメリットがあります。ワーク・ライフ・バランスの確保は大きなメリットのひとつです。自宅で仕事ができるため、家族と過ごす時間が増える、子育てしながら働ける、という環境も作れるでしょう。
また、通勤のストレスからも解放されます。満員電車や交通渋滞に巻き込まれなくなるため、無駄なエネルギーを消耗せず、仕事の生産性を高められるでしょう。
テレワークの課題と注意点
テレワーク導入により多くのメリットを得られますが、課題や注意点もあります。ここでは、主な3つの課題について紹介します。
1.社内のコミュニケーションが不足する
企業で働く場合は、挨拶や休憩時間の会話を通して、従業員同士が自然とコミュニケーションをとっています。テレワークの場合は、電話やオンライン会議など、意識的に会話の機会を作らなければ、従業員同士のコミュニケーションが取れません。とくに、複数の従業員が連携する業務は、情報共有をおろそかにならにように注意しましょう。
2.セキュリティ対策が難しい
テレワークには、情報漏えいのリスクがあります。企業の場合は、ネットワークセキュリティを強化したり、ウイルス対策ソフトを導入したりできますが、従業員個人の家のセキュリティまで管理するのは難しいでしょう。セキュリティ対策教育を行う、ウイルス対策ソフトを導入したパソコンを支給する、といった対応も必要です。
3.実施環境の構築にコストがかかる
テレワークを導入するためには、状況に応じて、パソコンやサーバーなどのハードウェア、作業や通信のためのソフトウェア、各従業員が社外で働くためのネットワーク環境などを整えなければなりません。当然、多くのコストがかかってしまうため、助成金の利用も検討しましょう。
テレワーク導入時に活用したい4つの助成金
前述のとおり、テレワークの導入には多くのコストがかかるため、助成金をうまく活用しましょう。ここでは4つの助成金を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
※2020年5月現在の情報をソースとして執筆しています
1.働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
厚生労働省により実施されており、働き方改革を進めるためにテレワークを導入しようとする中小企業向けの助成金です。資本金や従業員数について下表のような条件があります。
(厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」を参考に作表)
助成金の対象となる取り組みとしては、テレワーク用機器の導入、従業員に対する研修などがあげられ、取り組むためにかかった経費の一部が支給されます。ただし、単に取り組むだけではなく、一定期間内に1回以上はテレワークを実施するといった成果を出す必要があり、下表のように成果状況に応じて補助率が変動するのが特徴です。助成金額は「経費×補助率」で計算されます。
(厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」を参考に作表)
2.働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
新型コロナウイルス対策として、テレワークの導入を支援する助成金です。資本金や従業員数については、前項の「働き方改革推進支援助成金」と同様の条件となります。ただし、「テレワークを実施した労働者が1人以上いること」などの違いがあります。
1企業当たりの上限を100万円として、経費の1/2が支給されます。実施期間については、令和2年2月17日~5月31日という条件があるため注意しましょう。
参考:働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
3.IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や自営業者がITツールを導入する際に活用できる補助金です。テレワークを導入する際にも申請できるため、検討してみましょう。
ソフトウェア導入費用やハードウェアレンタル費用などが支給対象です。支給額は下表のとおり申請額などによって異なり、「経費×補助率」で計算されます。
(IT補助金2020を参考に作表)
助成金を有効活用してテレワークを導入しよう!
今回は、テレワークのメリットや課題、導入時に活用できる助成金について紹介しました。テレワークを導入すればさまざまなメリットが得られますが、導入時には多くのコストがかかります。厚生労働省地方自治体などが実施する助成金を有効活用しながら、テレワークを導入しましょう。