「トヨタの片づけ」に学ぶ、整理整頓したオフィスを作るコツとは?
山積みの資料で溢れかえるデスク。壁際に積み上げられた段ボール。何年も開けられていない引き出し…。
こうした乱雑な職場環境を改善するのは、総務の仕事の一環。整理・整頓は総務だけの力でできることではなく、社員一人ひとりの意識改革と習慣づけを必要とします。一方で、締め切りやノルマに追われている社員に対して「片づけをしましょう」と声かけをするのは、簡単なことではありません。
では、社員一人ひとりに片づけの大切さを理解してもらい、整理・整頓されたオフィスを作るには、どうしたらいいのでしょうか?
今回の記事ではその答えを知るべく、その経営手法で注目を集める「トヨタ」の片づけ哲学とコツを抜粋してご紹介します。
※この記事は、『トヨタの片づけ』(株式会社OJTソリューションズ著 KADOKAWA)を参考にしています。
トヨタの定義する「整理・整頓」とは?
皆さんは、「整理・整頓」の定義を知っていますか?
「整える」という字が入っているので、「きれいに並べて収納すること」だと考えている人も少なくないのではないでしょうか。広辞苑を引いてみると、「整理」とは「乱れた状態にあるものをととのえ、秩序正しくすること」。「整頓」とは「よく整った状態にすること。きちんとかたづけること」と書かれています。
一方、トヨタの定義する「整理」は「『いるもの』と『いらないもの』を分け、『いらないもの』は捨てる」、「整頓」は「『必要なもの』を『必要なとき』に『必要なだけ』取り出せるようにする」です。
机の上に物が置いていなかったら整理整頓ができていると思う人もいますし、引き出しの中のファイルが整列していれば、整理整頓ができていると思う人もいます。
整理・整頓の話を社内でするのであれば、まずは整理・整頓という言葉の共通認識を持てるように、言葉の定義付けをしましょう。そうすることではじめて、整理・整頓という言葉が力を発揮するようになります。
整理するためのコツ
総務のあなたは普段、会社に置いてある不要なものを捨てるための「明確な判断基準」を持っていますか?
「判断基準なんて、今後それを使う可能性があるかないかに決まっている」と思う方もいるかもしれません。しかし、この判断基準だとなかなかものを捨てることができなくなってしまいます。なぜならば、私たちは未来を予測することができないので、多くのものは、「もしかしたら、いつか、使うかもしれない」に分類されるからです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
トヨタでは、明確な判断基準を持つために、身の回りのものを以下の3つに分ける方法を取っています。
1、いま使うもの
2、いつか使うもの
3、いつまでたっても使わないもの
一つずつ具体的にみていきましょう。
1つ目の「いま使うもの」は、いま現在進行形で使っているものを指します。今日、あるいは明日使うもの。言い換えれば、それがないといましている仕事ができなくなってしまうもののことです。パソコンや、現在進行中のプロジェクト資料、来週発表するプレゼンの資料などがそれにあたるでしょう。これは、いるものです。
2つ目の「いつか使うもの」は、文字どおり”いつか”使うものです。トヨタ式の「いつか使うもの」が先ほどの、「もしかしたら、いつか、使うかもしれないもの」と違う点は、必ず「いつか」の期限を設けることにあります。1か月以内に。半年以内に、あるいは1年以内に。期限は短ければ短いほど良いと言います。期限を設けた「いつか使うもの」でもう一つ大事なのは、使い終わったらすぐに処分することです。
3つ目の「いつまでたっても使わないもの」は、今すぐに処分しましょう。ただし、自分に処分の決裁権がないものがある場合もあるでしょう。トヨタでは、決裁権を持っている人と話し合う、あるいは決裁権を持っている人を巻き込んで片づけを行うという方法がとられているそうです。
整頓するためのコツ
第一ステップの『いるもの』と『いらないもの』を分け、『いらないもの』は捨てる「整理」を終えたら、次は「整頓」に取り掛かりましょう。トヨタ式の「整頓」は「『必要なもの』を『必要なとき』に『必要なだけ』取り出せるようにする」ことを意味します。
一見、難しそうに聞こえるトヨタ式の「整頓」。ここでは、さまざまあるコツの中から2つを抜粋してご紹介します。
1、使う頻度で置き場所を決める
整頓する際に、誰もが考えるのが「何をどこに置くか」ということではないでしょうか。置き場所は、使う頻度で決めるのがトヨタ式。まずは、整理後に残った「いるもの」を使う頻度によって分けましょう。
1、毎日使う
2、2〜3日おきに使う
3、1週間おきに使う
4、1か月おきに使う
5、半年、1年おきに使う
このように、使う頻度によって分けておけば、毎日使うものはデスクの上や近くの棚に。2〜3日おきに使うものは、引き出しの手前に。そうすることで使う頻度が多いものから順に取り出しやすい場所にしまうことができます。
極端に使う頻度が少ないものは、倉庫や資料室に置いておくのも良いでしょう。
2、定位置を決める
ハサミを探すのに一人ひとりの机を見て回ったり、ガムテープが見つからずに発注をしたら翌日には昨日見てもなかった場所に置いてあったり、なんて経験をしたことはありませんか?
この「ハサミを探している時間」も、「ガムテープの発注にかけた時間」も、きちんと整頓がされているオフィスであれば、他の業務を行うために使えたはずです。「たったの5分や10分くらい」と思うかもしれませんが、社員一人ひとりの小さなむだが積み重なると、結局は膨大な人件費と時間をムダにすることになりかねません。
では、こうしたムダを避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。トヨタの答えは、使う頻度の低いものはシェアすること。そして、シェアをする際に重要なのが「定位置を決める」ことです。定位置を決めたら、置き場所をテープで囲ったり、チョークで描いたりして誰にでもわかるようにしましょう。使った後に戻す場所が明確になるだけでなく、使用中である、ということも一目でわかるようになります。
それでも出てくる捨てられないものは?
「書いてあることを実践してみたけれど、整理・整頓できないイベントグッズや、門松などの季節のグッズもある。」
そんなときにおすすめなのが、ストックマモルです。
ストックマモル(物品保管サービス)
預けた物品をWeb上で写真で確認することができ、さらに取り出しの依頼などもWeb上でできてしまいます。
普段は使わない物品をストックマモルに預ければ、限られたオフィスのスペースを「整理・整頓」することが出来るでしょう。
具体的な利用方法やメリット・デメリットは過去の記事「【比較検証】東京都内の一畳と宅配収納サービスの一畳はどっちがお得?」にまとめてあるので、興味のある方は見てみてください。
まとめ
今回の記事では、「トヨタの片づけ」に書いてあることのほんの一部を編集部で抜粋してご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。どれも今すぐに始められることなので、まずは総務で働かれているご自身で試してみるのも良いでしょう。
また、同書には今回ご紹介した以上に、さまざまな方法や考え方、そしてコツが紹介されています。すでに文庫版も出ていますので、「もっと知りたい」という方には、実際の本を手に取ってみることをお勧めします。