求人の応募数が10倍に!?働きやすさと採用力を高めるオフィスづくりを株式会社ヴィスに聞く

オフィスデザイン・レイアウト実績4,500件以上、日経ニューオフィス賞を20回以上受賞。ベンチャー企業から大手企業まで、100社100通りの思いをかたちにしている株式会社ヴィス(以下、ヴィス)。

働き方改革の一環として改めて職場の環境が見直されている昨今に、オフィスづくりのリーディングカンパニーが考えるオフィスのあり方とは。同社常務取締役 金谷智浩さんにお話を伺いました。

株式会社ヴィスってどんな会社?


▲執務エリアのほぼ中央に位置する「VIS CAFE」

「はたらく人々を幸せに。」を、会社のフィロソフィーに据えるヴィスは、オフィスづくりを通じて企業価値やブランドの向上を目指す、デザイナーズオフィス事業を展開しています。

事業の大きな特徴は、オフィスに関わるさまざまなデザインワークをワンストップで提供できること。空間から、インテリア、Web、グラフィック、ロゴ、名刺のデザインにいたるまで、幅広い領域をカバーしています。

その対応力や発想力が評価され、案件の受注率はなんと70%超。多くの企業に選ばれる同社の考え方やケーススタディーの紹介から、より良いオフィスづくりを考えます。

高まるオフィスづくりへの関心。課題は社内コミュニケーションに


▲常務取締役 金谷智浩さん

–働き方改革への言及にともない、オフィスに関する相談は増えていますか。

問い合わせ件数は、昨年対比で約120%増。これまではベンチャー企業様からご相談が中心でしたが、働き方改革にともなって、大手企業様からの引き合いも増えています。

また近年の傾向として、ユニークなオフィスづくりや働き方をしている企業様のオフィスに見学に行かれる会社様も増えているため、関心の高まりが伺えます。

–そういった背景のなか、どういった相談内容が多いのでしょうか。

社内コミュニケーションに課題を抱える企業様が多いですね。日本企業は縦割りの組織になりやすいため、単一の部門だけで完結してしまうことがあります。そのため、A部門に実績があるにも関わらず、それを知らないB部門がゼロから取り組んでしまうという非効率な事例も珍しくありません。

そうした問題を解消し、横断的な交流から新しい発想を生み出したいという考えが、オープンな執務エリアの構築やフリーアドレスの導入といった問い合わせにつながっていると思います。

【ケーススタディー①】部門を越えた交流が生まれるオフィス

–具体的な事例から、貴社のオフィスづくりをお教えいただけますか。

創業80年の老舗ベアリングメーカーA社様の事例をご紹介します。

課題は主に、(1)管理部門と工場部門がセクトで区切られているため、部門を超えた交流がないこと、(2)旧態のメーカーイメージによって、採用が思うようにいかないこと、この2点にありました。そこで社長の代替わりをきっかけに、ブランドイメージや
働き方の刷新を図るべく、弊社にご相談がありました。5階建て自社ビルの全フロアをリノベーションした案件です。

–もっとも力を入れた施策は、どんなことでしょうか。

大きな仕掛けとしては、社員同士の交流が生まれる「社員食堂」の設計です。これまでにもA社様では、弁当の仕出しというかたちで昼食を提供していました。しかし食事をとる環境は、会議用テーブルにパイプいす。どこか閑散としたランチタイムになっていました。

そこで、開放的なカフェテリアのようなデザインに一新。テーブルやチェアの設えもこだわり、思わず長居をしたくなるような空間にしました。社員の皆さんが集まり、ゆっくり食事を楽しみながら、自然と会話がはずむような雰囲気に仕上げています


▲老舗ベアリングメーカーA社様の事例。写真上2枚は社員食堂、下2枚はワークスペース

さらには、同エリアに卓球台を設置。プレーする人が楽しめることはもちろん、それを見に集まる人同士が気軽に声を掛け合えるようにしました。部署や世代を超えたコミュニケーションの発生をねらっています

–結果、どのような変化がありましたか。

「社員同士の結びつきが変わった」とお褒めいただきました。開かれたワークスペースの設計やフリーアドレスの導入も、部門間の交流を促進する結果に。新しい会社のイメージをつくることができたので、採用にも効果が出ていると伺っています。

【ケーススタディー②】社員の主体的な働き方をサポートするオフィス


▲リビングダイニングを意識した、ヴィス 東京オフィスのエントランス・サロン

–多種多様な案件を手がける一方、貴社のオフィスにはどんな工夫がありますか。

弊社の東京オフィスのコンセプトは、「home」です。自宅のような居心地のなかで仕事ができることや、社内外の交流が生まれるソーシャルな場所を目指しました。

エントランスのドアを開くと、リビングダイニングのような空間が広がります。ダイニングテーブルを意識したデスクやソファー席をレイアウトするとともに、植物を配してリラックスできる雰囲気を演出。周囲を囲むようにつくられた会議室は、書斎の位置付けです。著名作家の名を冠することで、意味付けを行っています。

–コンセプト設計や意味付けは、大事なポイントでしょうか。

この空間が、何のためにあるのか。その意味を社員一人ひとりが意識できるような仕掛けをつくっておくと、オフィスはより効果的に機能します

たとえば、『不思議の国のアリス』を書いた「ルイス・キャロル」の名を冠した会議室は、その世界観を想起させるポップなデザインになっています。明るい雰囲気のなかで会話ができるため、商談時に利用すればスムーズなコミュニケーションを後押ししてくれます。


▲会議室「ルイス・キャロル」。その他、ヘミングウェイやシェイクスピアの部屋も

また、ワークスペースにおいては、一定のエリア内で自由に席を選べるグループアドレスを採用しています。誰と、どこで仕事をするのか。社員が主体的に働き方を選べるようすることで、アウトプットを最大化しやすい環境をつくっています

ストーリーのあるオフィスづくりが、社内外のブランディングに

–改めて、企業にとってオフィスとは何でしょうか。

企業の「文化」だと思います。それをオフィスで表現できることに気が付くと、無機質なものはなくなるのではないでしょうか。100社100通りの仕事や理念があり、その思いをデザインしていくわけですから。

そのため私はいつもお客様に、「ストーリーを語れるオフィスづくりを」とお伝えしています。ただお洒落なものを設えるのではなく、企業の考えを伝える言葉として、働く人を思う気持ちとしてオフィスの文脈を語ることができれば、確実なブランディングにつながります。

実際に、求人広告を出して10人も集まらなかった企業様が、物語のあるオフィスをつくって記事化したところ、100人以上のエントリーがあったという例は数多くあります。10回の広告出稿か、1度のオフィスデザインか。近年ではそうした費用対効果に着目し、広報宣伝費や採用コストの一部を、オフィスづくりに当てる会社様も増えています。

–オフィスづくりがもたらすメリットは何でしょうか。

快適な空間ではコミュニケーションが活発化するため、より良いチームビルディングを行うことができます。そして社員のエンゲージメントが高まれば、離職率も減少。こういう会社で働きたいと思ってもらえれば、採用力のアップにもなります。

結果として働く環境の充実は、企業の成長を促します。そういった観点からも、オフィスづくりに本気で取り組む価値があるのではないでしょうか。

まずは実用的なオフィスづくりからのスタートを


▲ワンポイントアドバイスを語る金谷さん

オフィスはただ働く場所ではなく、企業文化を表すもの。だからこそ、リノベーションや移転のタイミングは、会社のイメージを変える大きなチャンスです。そうはいっても、すぐに取り掛かるのは難しい問題でもあります。

金谷さんはワンポイントアドバイスとして「たとえばチェアの取り替えなど、社員の満足度が高い家具に一新するだけでも効果はあります。いきなり内装工事にコストをかけるよりも、まずは機能するものを取り入れることが良策です」と教えてくださいました。

会社の成長と、社員の働きやすさに貢献するオフィスづくり。新しい企業文化の構築を目指して、一歩ずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。