ワーケーションとは?JALやJTBも導入する「仕事と休暇を融合」した新しい働き方
近年、働き方改革の一環として注目されている「ワーケーション」。仕事と休暇を融合するという新しい働き方で、リゾートなどの旅先で「働きながら休む」「休みながら働く」というスタイルが特徴です。
ワーケーションは、日本ではJALが導入したことから認知されるようになり、有名なところではJTBや三菱UFJ銀行なども導入し、従業員から好評を得ているようです。また、和歌山県や長野県などの自治体もワーケーションの受け入れに積極的で、環境整備に力を入れています。
今回は、ワーケーションを導入するメリット・デメリットや導入事例などをご紹介していきます。
ワーケーションとは「旅先で仕事をする」という新しい働き方
ワーケーション(WorkationもしくはWorkcation)とは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、仕事と休暇を融合させた新しい働き方のことを言います。地方やリゾートなどの旅先に赴き、休暇を兼ねて働く労働形態を指すのが一般的です。ここ数年、日本でも知られるようになり、働き方改革の次の一手として注目を集めています。
ワーケーションとテレワークの違いは?
オフィス以外の場所で働くという意味では、ワーケーションとテレワーク(リモートワーク)は同じように思えるかもしれません。ですが、ワーケーションは次の3点においてテレワーク(リモートワーク)とは大きく異なっています。
・環境をガラリと変える
テレワーク(リモートワーク)は通常、自宅やコワーキングスペースなどで仕事をします。一方、ワーケーションは地方やリゾートなどの旅先に赴き、普段とはまったく違う非日常の環境で仕事をします。場所にとらわれず、働く環境をガラリと変えるのが特徴です。
・主目的はリフレッシュや休暇取得の促進
テレワーク(リモートワーク)は、業務効率化や生産性向上を主な目的としています(新型コロナウイルス流行の状況下では、感染防止対策の目的も)。ワーケーションも同様の目的がないわけではありませんが、大きな狙いは従業員のリフレッシュや休暇取得の促進にあります。
・仕事と休暇を融合したスタイル
テレワーク(リモートワーク)は単純に「離れた場所で働くこと」を意味し、どこであろうと仕事をすることに変わりはありません。一方、ワーケーションは、仕事と休暇を融合している点に大きな特徴があります。「働く」or「休む」の二者択一ではなく、「働きながら休む=休みながら働く」という第三の選択肢だと言えるでしょう。
ワーケーション導入のメリット・デメリット
ワーケーションは、場所にも時間にもとらわれない自由度の高い働き方。企業がワーケーションを導入するメリット・デメリットを見ていきましょう。
ワーケーションを導入する企業のメリット
・休暇取得を促進できる
日本の労働環境においては、従来より有給休暇が取りにくいことが問題視されていました。そのため、2019年の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、最低でも5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
ワーケーションには、有給休暇の取得を促進する効果が期待されています。たとえば、ワーケーションを利用して木曜・金曜とリゾートで仕事をし、翌週月曜に有給休暇を取得すれば、5日間にわたってリゾートで過ごすことができます。長期の家族旅行もしやすくなり、従業員のワークライフバランスの充実にもつながります。
・健康経営を推進できる
近年、過重労働・長時間労働によって心身の健康を損なう労働者が増えています。このような背景から、従業員の健康管理に投資する「健康経営」の重要性が叫ばれるようになりました。
ワーケーションで非日常の環境に身を置くことで気分転換になりますし、仕事のかたわら、スポーツやアクティビティを満喫できれば心身ともにリフレッシュできます。従業員のモチベーションが高まり、生き生きと働ける、まさに健康経営に貢献する取り組みだと言えるでしょう。
ワーケーションのデメリット・懸念点
・メリハリがつきにくい
ワーケーションは仕事と休暇を融合する制度ですが、その境目があいまいになりがちです。従業員によっては、常に頭の片隅で仕事のことを考えてしまい、休暇を満喫できないかもしれません。
・コストがかかる
ワーケーションの導入にあたっては、オフィス勤務であれば必要のない費用が発生します。移動費や宿泊費、施設利用費のほか、モバイル端末やコミュニケーションツールなどを整えるにもコストがかかります。
・セキュリティ対策が必要
オフィスではない場所で働くとなると、どうしてもセキュリティリスクが高まります。データをやり取りする方法や機密情報の扱い方、モバイル端末の管理方法などを含め、セキュリティ対策を整えたうえでワーケーションを導入する必要があります。
ワーケーション事例(企業&自治体)
ワーケーションを導入している企業の事例と、ワーケーションに必要な設備・施設を整えて積極的に受け入れを進めている自治体の事例をご紹介します。
ワーケーションを導入している企業
・JAL
JAL(日本航空)は、2017年、国内でもいち早くワーケーションを導入した企業です。導入にあたっては、目的や注意点、実施例などの説明をおこない、従業員にワーケーションという新制度への理解を促しました。加えて、セキュリティレベルの高いPCやスマホを貸与するなど、入念な準備を経て導入に至りました。導入初年度の7~8月にワーケーションを利用した従業員は34人。海外でワーケーションをする従業員もいたようです。
・三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行は、避暑地・軽井沢でワーケーションをおこなっています。会社が保有する保養所にITオフィスを新設し、ワーケーションの拠点としています。家族と軽井沢に滞在しながら仕事と休暇を両立できるということで、従業員からの評価も上々です。
ワーケーションの受け入れに積極的な自治体
・和歌山県
全国の自治体に先駆けてワーケーションの受け入れに取り組んでいるのが、和歌山県です。県庁内にワーケーション・コンシェルジュを設置し、ワーケーション実施プランの作成を支援。温泉地・白浜町にはWi-Fi完備の宿泊施設も多く、会議室などの整備も進んでいます。世界遺産の熊野古道や高野山など、山や海だけにとどまらない独自の価値で、「ワーケーション=和歌山県」のブランドづくりを進めています。
・長野県
長野県では、信州ならではの豊かな自然の中でリゾートに滞在し、休暇を楽しみながら働くスタイルとして「信州リゾートテレワーク」を推進しています。ドロップインで利用できるコワーキングスペースから、Wi-Fiやワークスペースなどを整えた旅館・ホテルまで、多様なニーズに対応できる環境を整備。質の高いワーケーションの実施を支援しています。
ワーケーションで働き方改革を推進しよう
企業の働き方改革だけでなく、地域の活性化や関係人口の増加、また観光産業の需要拡大につながる施策として、ワーケーションは今後さらに広がっていくことが予想されます。
ただし、ブームに乗るように導入しても成功は見込めません。ワーケーションを成功させるには、セキュリティ対策の強化や、ビジネスチャットなどのツール導入の準備は必須。さらには、柔軟な働き方を根付かせるための風土づくりも進めていく必要があるでしょう。